2009年 08月 20日
チベットの空の下 |
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僕らのビラは川の流れをすぐ真下に臨み、川向こうには青々とした牧草地が広がり放牧された様々な動物達がどこからともなく現れては、また次の場所に移動していく。チベットの家屋というのは、基本的にはあまり部屋の中に採光をしないらしく日中でも薄暗い。だからずっと僕らは間接照明を灯していて、だからこそ日中に昼間の明るさは部屋の中からみるとその明暗の対比からまるで呼ばれているかのような「桃源郷」にも見えるわけで。外のテラスにもテーブルとイスがあって、そこで僕らはワインを飲みながら飽きもせずその風景に見入り、そして持参した本を読む。
何もしない贅沢を満喫できる場所。空を流れる雲を眺め、川向こうから聞こえてくるカウベルと牛や羊の鳴き声。川のせせらぎ。山肌の細い道を時折村の住人や羊飼いが降りてくるのが見える以外は、動いているものは、尻尾を振り続け草をべる牛の尾と川の水面も輝きくらい。ただ座って目の前のそんな風景を見ているだけで、最高にくつろいでいる自分を感じる場所。不思議なもので、これが冷房の利いた都会の一室で、ただ何もすることもなくソファに座ってぼーっとしていたとしたら絶対に今のような満ち足りた気分にはならないはず。逆に単に「暇だなあ」「自分は何のために生きてるんだろう」的なネガティブな意識を持ってしまいそう。自然の中に身を置き、自分がその中の1つとして存在していることを感じるとき、きっと体の中の僕らの「自然」がそれに同化して僕らも本来の時間の流れに素直に従うのかもしれない、と思ったり。
時折、生垣の向こうを艶やかな民族衣装を身にまとった女性が背中に籠を背負って通り過ぎていく。緑のこの土地にあって、真っ赤なターバンのようにも見える地元の女性たちの衣装は、遠目にも目につく。彼女たちの顔は真っ黒に日焼けし、おそらく彼女たちの実際の年齢以上に見せている。だけど、その笑顔が何と自然で素敵なことか!僕も栗助も、この土地の人達の笑顔には男女問わずすっかり魅了されてしまった(笑)。
朝食を食べると、まずはホテルの敷地内とも外とも区別がつきにくいようなこの界隈を散歩。丘陵地かつ標高4000m近くこの界隈はちょっとしたアップダウンでも、外国人の僕らには油断をすると、息切れがしてしまう。走るなんてことはもってのほか。ゆっくり歩くと自然と道端の小さな野草や遠く風にのってきこえてくる家畜の鳴き声、時折太陽の前を横切る薄い雲の陰に気づいたり。ここのもう3-4日いるけれど、半ば日課になったこの散歩は僕らをまったく飽きさせない。疲れると、またゆっくりとホテルに戻り、チベット風の建物の2階のテラスに用意されたイスに腰を下ろすと、スタッフが熱いジンジャーティーを淹れてくれる。至福、、、
ここもあと数日しかいられないけれど、だけどアホな僕らはきっとここにずっといたら今感じていることすらも幸せだ感じる気持ちも希薄になった上に「刺激がほしい」とか言いだして、、、、そう思うと、なんだかある種の人間の持つ永遠の連鎖というか、まあ適度にこうしたインターバルを繰り返すしかないのかな、とも思ったり。かつて世界が狭く、自分の生きるテリトリーと知識が非常に限られていた時代は、やはりそれはそれで幸せだった部分もあるのだろう。今は、動かずとも莫大な情報を得ることができる中、手の届きそうなこのチベットの空を眺めていると、人間そのものが本来の純粋な幸せといったものをなかなか見つけにくい、不幸な時代にもなってしまったような気がしてくる。
by usatoru
| 2009-08-20 21:14
| 旅
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Comments(10)
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佳
at 2009-08-20 22:57
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まさかチベットの空の下で、栗助画伯の絵に出会えるとは!
うん!なんだか文太さんの身体に合わせるとバッチリのような、そうでもないような(笑)
栗助画伯本人に、お聞きしたいところですね。実際のところを・・・。
文太さんの、心に染み入る文章をじっくり読みたいんだけど、どーしても栗助画伯の絵が気になって、気になって・・・・あーどうしよう。
うん!なんだか文太さんの身体に合わせるとバッチリのような、そうでもないような(笑)
栗助画伯本人に、お聞きしたいところですね。実際のところを・・・。
文太さんの、心に染み入る文章をじっくり読みたいんだけど、どーしても栗助画伯の絵が気になって、気になって・・・・あーどうしよう。
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bebecat at 2009-08-21 00:47
おおおお、これは誰?栗ちゃんかな?いや、文太さん?
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niko
at 2009-08-21 04:34
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nobuko
at 2009-08-21 09:44
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も~やめてくださいよ。栗助画伯の絵で顔隠すのは!
おもしろすぎ!!
おもしろすぎ!!
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アイ
at 2009-08-21 23:04
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usatoru at 2009-08-27 00:05
佳さん。やはり意識はそちらに行ってしまいましたね。
18禁の危険があるのでお面をかぶっていただいた次第、、、、
18禁の危険があるのでお面をかぶっていただいた次第、、、、
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usatoru at 2009-08-27 00:06
bebecatさん。あ、これ僕ですよ。栗助は187cmなので僕よりもちっと背が高いです。
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usatoru at 2009-08-27 00:08
nikoさん。それってありますよね。逆説的だけど、選択できないことや世界が狭いことが生む幸せの価値観、っていう、、、、豊さゆえの幻影かもしれませんけど(^^;
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usatoru at 2009-08-27 00:08
nobukoさん。以前は島耕作でいきましたが、そっちのはどうしてもスーツ姿イメージなので今回はコレでいきました、、、
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usatoru at 2009-08-27 00:09
アイさん。僕は描くとそれなりにうまく??かけて、そっくりになってしまうといけませんので、それはお預けです~