2016年 10月 05日
「怒り」感想文 |
うん、面白かったかな。原作読んだのが数年前で確かここでも書いて、その時は勿論映画化されるなんて思ってなかったけど。ストーリー的にまったく互いに交流のない東京、千葉の漁村、そして沖縄の人間模様をどう絡めながら映像化されるのかなあ、なんて思っていたけど、それぞれの成り行きを気にさせながら途中で「そうか、これらの男たちの誰かが犯人なんだ」と観客に悟られた段階から、結構それぞれが怪しげな行動を見せ始め、、、みたいなそこからそれぞれの登場人物たちの心の機微を、観客である僕らは客観的に見ていくことになる。まあ、僕は原作読んでいたのでストーリー的にはネタバレ前提で見てたわけだけど。
人の対する信頼とか、信頼していてもやはり疑いや人間の持つ視野狭窄とか、1つ1つの細かなシーンから考えさせられる点は映像化されても見事に表現されていた感じ。
一方で、やっぱり巷で話題なのは映画そのものよりも、人気若手俳優がゲイカップルを熱演していること。妻夫木聡(雄馬)と綾野剛(直人)なんだけど、ここはある種僕らの生活とも重なる部分があったかなあ(笑)。彼らの設定は、割とオープンにゲイライフを楽しんでいる雄馬、そしてどこか影のある直人。そういう対局にも見える2人ながら、出会ったのはいわゆる「ハッテンバ」と言われるゲイがその場限りでの出会いを求めて遊ぶ場。2人の生活や会話は、一般にメディアで流されるような面白可笑しい「ゲイ」ではなくて、ごく普通の男の生活として描かれているのはすごく好ましい。
雄馬の部屋は、結婚を前提せず子供を持たないことを前提としたライフスタイルを志向する雰囲気のしゃれたマンションで、いつかは結婚、、と思い結婚資金やその後の生活を踏まえて生活している独身男性が住む雰囲気じゃない(笑)一方で、直人はホントにいわゆる世間で言うゲイっぽさがまったくなくて、そもそもこっちの世界では受けが悪い長髪だし、全体的なオーラとしても雰囲気ゼロ。でも、勿論こういうタイプのゲイだって本当は普通にたくさんいる。世の中である種可視化されて、ゲイシーンに何等かの関わりを持ちつつ、こっちの友達も多くなってくると、ゲイの世界での流行りや志向みたいなのが反映されてくるのかもしれません。とはいえ、雄馬もゲイっぽくない。でも、どこか「そういわれればそうかもね」みたいな雰囲気もある、すごくいい感じの演出に感じるわけ。ちょっとこじゃれた感じ、無精ひげ。いわゆる部屋や服装含めて美的センスの持ち合わせの観点でノンケ(ストレート)よりゲイといってもその確率は低くない、と思わせる微妙なラインでいってるかな。
とにかく、ゲイとしての2人の見せ方に僕はすごく親近感。「墓」の話題なんて、究極のゲイ泣かせというかテーマかも(笑)「一緒じゃなくても隣でもいいよな」なんていう直人の言葉とか、あまりにもセンシティブな話なので「一緒に入ろうよ」とダイレクトには言えないながら、その自身の願望や望みをすごく遠まわしにしか言えない雄馬。なんかそういうコミュニケーションの裏側って、なんかよくわかるわー。とか思った。(吉田修一はゲイ疑惑も上がるほどに、非常にゲイシーンの筆致が緻密<笑)
まあ、演出はともかくストーリーとして、やっぱり2人の関係性とか「ヒトを信じること」そして想うからこそ疑ってしまうとか、疑っているつもりはないんだけれど猜疑心が膨らんでしまうような矛盾とか、このゲイカップルに限らず、それぞれの登場人物たちの間でのその共通の性(さが)としての人間の悲哀みたいなものは、それぞれ泣ける。そして、やっぱり直人かわいいし、かわいそう~。ちなみに僕は綾野くんはタイプではありませんが、割と性格フェチなので、映画の中での役割としての綾野くんみたいな子は僕は好きになれるかな<笑)
って、なんかこの2人にフォーカスしたことばかり書いてますけど、そこはご容赦w
特筆すべきは、ホントにこの映画には主役がいないってことですかね。これは見た人であれば実感としてわかるはず。人生に結局脇役なんて人はいないわけで、見る人それぞれがどの登場人物に一番の思い入れを入れてみるかによって、人によって主役が変わるといっていい。僕なんかはゲイカップルあたりになるわけだけど。親子関係であれば渡辺謙や宮崎あおいに感情移入する人もいれば、何か世の中から一線を引いて生きることを余儀なくしている人であれば松山ケンイチとか、レイプを含めて凶悪犯罪や心に傷を負った女性としての立場や、切ない恋心や優しい気持ちに共感すれば沖縄がメインに。時としてある意味において「犯人」に共感する人もいるかもしれない。そんな映画です。
by usatoru
| 2016-10-05 13:10
| 同性愛考・・・
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Comments(4)
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な、な、なんですって!
at 2016-10-07 12:42
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おれんじでーす!
ずいぶん前にエンドロールがながれ、、、ある意味ショパンのしんみりしたメロディーラインのようなブン太節にごきげんようと。で、今日ひさびさランキングからのぞいてみれば!!!粘着質といわれようがw 期せずして昔の友人に雑踏の中で再会できたようなw
ずいぶん前にエンドロールがながれ、、、ある意味ショパンのしんみりしたメロディーラインのようなブン太節にごきげんようと。で、今日ひさびさランキングからのぞいてみれば!!!粘着質といわれようがw 期せずして昔の友人に雑踏の中で再会できたようなw
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かぶこまま
at 2016-10-10 20:13
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今、いくつかエントリーをまとめて読みました。初期からの読者です。は〜、文太さんのブログ読めて幸せ って感じました。(それだけです。。)
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usatoru at 2016-10-13 18:02
おれんじさん。性懲りもなくすみませんねえ(笑)お付き合いくださいませ。
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usatoru at 2016-10-13 18:37
かぶこままさん。だらだら文でそんなこと言っていただけると、こんなんでも誰かに喜んでもらえるんだなあ、と幸せに思います(笑)