2010年 10月 01日
尖閣諸島で離れた心 |

一般に声高にいろいろと騒がれている日本の外交とか、領土問題や認識であるとか、あるいはナショナリズムのようなことはさておき、僕自身個人的にちょっと思うことというか、感じてしまった正直な気持ちを書きたいと思います。理屈じゃない一種の素直な告白というか。
僕は中東やアフリカ、南米なども含めて日本人の中でもかなり多くの国々を歩き、そして友人知人がいる方だと思います。勿論、歴史認識や価値観の相違、文化の違いや、世界ではよくある隣国ゆえの仲の悪さであったり、互いを気にかける、、、という意味では日本と中国も例外ではありません。基本的に国境を接する隣国というのは古代からのDNAなのか警戒をする相手であり、往々にして仲のよい隣国というのはあまりなかったりするのが事実です。
とはいえ、僕は中国に対して基本的にすごくニュートラルに、過去の日本の侵略という悲劇の歴史はあったことに胸は痛むものの「今」を生きる人間として、これからの両国関係や交流という意味ではすごく未来志向で考えている方だったんですね。
でも、本当に理屈とか、あるいは理性ではなく、今回の中国の振舞いや態度についてはつくづく嫌悪感を感じていると同時に、中国という国に対して少なからず不信感と嫌中感情が芽生えてしまいました。領土がどちらに属するか、ということよりも、言ってみれば主張はそれぞれあるにせよ互いのリスペクトや礼儀のなさというか。このブログにも、華僑の方や中国人の方もいらっしゃいます。それは分かっていて、個人レベルに落とし込んだときにこれは個人のことではなく、国家というものに対する感情だとは頭では理解しています。
でも、自分自身で自己分析するに、僕は傾向としてリベラリストでありダイバーシティの許容やいい意味での世界人を一種の哲学としている人間です。そういう中国に対して非常に前向きでニュートラルに考える人間が、嫌悪感を抱くようなことをしてしまった中国政府は、日本の人心という部分で取り返しのつかない失態をしてしまったように思うのです。共産党独裁や地方と都市との格差などの国内の不満分子の意識を、抗日意識でガス抜きしようとする意図があるとかないとか言われていますが、少なくとも品格や徳、礼という本来中国にも存在し尊重される言動には全く及ばない今回の言動は、僕という小さな人間だけにとどまらず世界のメディアの論調を見ても、国に人格があると仮定すれば国としての尊厳を世界で大きく傷つけたのではないかと思うのです。
強大な圧力で相手を屈服させるという行為は、かつての大日本帝国が傀儡の満州国を建国させたことをも彷彿させます。「やられたからやりかえす」という論理でしょうか。では、現在の中国の周辺各国やチベット問題などは国としてどのようなスタンスであると説明し、世界を納得させることができるというのでしょうか。歴史の過ちを糧に現代日本と現代中国は新しい共存と繁栄の道は歩めないのでしょうか。そのためには、たとえそれが草の根であったとしても、心ある中国人と日本人の互いのニュートラルで未来志向なベクトルを、国家が踏みにじるようなことをしていては、おそらく本当の繁栄と人々が心豊かな国をつくりあげることは中国はできないように僕は思います。
学生時代にはまだ人民服を着た人ばかりの中国を歩き、シルクロードの砂漠も旅しました。天安門広場に出来た中国初のマクドナルド1号店でハンバーガーを食べた僕は、窓の外からの人々の興味と羨望の眼差しが居心地悪かった思い出とか。仕事では各地で素敵な人々に出会い、2年前の夏も栗助と雲南省やチベットを歩き、心温かな交流がそこにはありました。あの人達に罪はなく、そしてこうしている今もかの地で元気に暮らしているのでしょう。それでも、今の僕は国としての中国を素直に好きだと言えなくなってしまいました。
外交姿勢や戦略としての賛否は諸々あるものの、せめて日本人が同じ土俵やレベルになって、報復合戦をするような子供じみたことをせず、冷静に対応している姿勢にせめて少しの安堵を感じます。

by usatoru
| 2010-10-01 00:53
| Other
|
Comments(4)

文太さんに同感です。私も中国に対してというかヨーロッパに住んでいて基本的に、旧共産圏の人などに対する差別意識はないしアジアの国にも差別はないと自負していますが...今回の中国。今まで嫌いだと思ったことはなかったけど、この仕打ちに一気に気持ちが冷めた恋愛中の女子の気分。彼氏の知りたくなかった癖を見た、みたいな気分です。百年の恋も冷める仕打ちって感じがしちゃいました。
こういうことを堂々と国際舞台でする中国と言う国の、政治家の基本的姿勢にただただ開いた口がふさがらないというか...なんだか悲しいですね。こんな仕打ちを平気でする中国にも、そして日本の政治姿勢にも...がっかりです。
こういうことを堂々と国際舞台でする中国と言う国の、政治家の基本的姿勢にただただ開いた口がふさがらないというか...なんだか悲しいですね。こんな仕打ちを平気でする中国にも、そして日本の政治姿勢にも...がっかりです。
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はい、私も同感ですね。
そして今回、国としての中国は、強い大国を示すことにはならず
逆に、そうまで厚顔な振る舞いをしなければ
国が成り立たない危うさ(経済も、資源も、人心も)を
露わにしたと感じています。
以前、パートナーであった中国人が、
「昔は中国も礼儀正しかった」と嘆いていたのを思い出します。
一挙に経済成長を目指した頃から、変わってしまったと。
ただ、出来れば今回のことに関して、
文太さんも「国としての中国」と表現に配慮されているように、
国の振る舞いと一般の中国人とを
ごっちゃに語らないようにしたいなと思いますね。
おそらく中国の庶民は、母国を愛する強さと同じくらい、
母国を信じられない悲哀も胸の奥にしまっているのでは…と
個人的には感じるので。
そして今回、国としての中国は、強い大国を示すことにはならず
逆に、そうまで厚顔な振る舞いをしなければ
国が成り立たない危うさ(経済も、資源も、人心も)を
露わにしたと感じています。
以前、パートナーであった中国人が、
「昔は中国も礼儀正しかった」と嘆いていたのを思い出します。
一挙に経済成長を目指した頃から、変わってしまったと。
ただ、出来れば今回のことに関して、
文太さんも「国としての中国」と表現に配慮されているように、
国の振る舞いと一般の中国人とを
ごっちゃに語らないようにしたいなと思いますね。
おそらく中国の庶民は、母国を愛する強さと同じくらい、
母国を信じられない悲哀も胸の奥にしまっているのでは…と
個人的には感じるので。
maiさん。少し時差がありますが、現状やはり日本以外の外国もある意味で中国に対して大枠で言えば「呆れている」感じですよね、、、、
hisayoさん。そう、個人に落とせばいろんな人がいるのは日本でも中国でも世界でも一緒なんですよ。海外にいる中国人は愛国心はあるものの、ある種どこかで今の国の形態を恥じたようなことを言う傾向があるのは結構共通するところかなあ、、、