2013年 04月 04日
強く生きること |
彼の両親は幼い頃に離婚し、妹と兄の彼の3人兄弟は母子家庭で貧しい家庭だったといいます。両親とも中卒で、1年年上の兄は地方都市の市内では有名なかなりの「不良」。彼自身は真面目な子だったのだけど、あまりにも兄が悪いために教師たちからも色眼鏡で見られ、貧しさから高校進学も「お前の家だと進学はせず働いたらどうだ」なんて言われる始末。でも成績もよく高校に行きたかった彼は推薦で行ける公立高校への進学を決意します。ただいわゆる本来の彼なら行けるレベルの進学校はアルバイト禁止の校則があるので、ランクを下げてアルバイトができる高校へ進学します。昼間は学校にいって、夕方から夜はアルバイト。修学旅行の積立金は月3000円くらいだったので、それくらいだったら貯められたし、高校生のアルバイトながら毎月10万円を貯蓄したといいます。想定外だったのは、おそらく家庭の収入の関係なのか彼の成績のためかは僕も利かなかったけれど、学費は免除になったことが彼にとっても幸いだったらしい。そうなると、彼は今度は大学に行きたくなるわけですが、大学は都内の夜間(2部)に進学して、昼間は派遣社員として働き、夜は大学で勉強。そして今、某外資系企業に就職し、自分の生活には困らない生活を手に入れたといいます。なので彼と話していると、いつもにこやかで、そして小さなことに対しても「僕は幸せです」「仕事は楽しいです」といった苦労ゆえのポジティブな現生活や仕事に対する言葉を口にする子なので、僕もすごく好感が持てたのと同時に、この現代社会や同じ世代の子たちと比較してちょっと不思議な印象もなかったわけじゃなく。
まあここまではいわゆる貧しさを背景とした苦学生の話なのですが、またこれがいろいろあって。離婚した父親に関しては、彼としては一度くらい父に会ってみたいと思っているものの母親は絶対に合わせてくれない。年に1度だけ年賀状が届くのだけど、息子を気遣う文面のようなものをちらっと見せるだけで、どこに住んでいるのかとか、そうしたことは一切教えてもくれない。彼は18歳になったら父に会おうと心に決めていたらしく、家中をひっかきましわして父親の居場所を突き止めます。住所がわかり、それを地図で確認した上でグーグルアースでその画像を見たときに「ああ、そういうことだったんだ、、、」と。これまで母親に1年に一度見せられた父親からの葉書には、黒い小さな穴が開いていたといいます。それって、僕も知らなかったけれど「検閲印」のようなものらしい。つまり、彼の父親は刑務所にいて、刑務所というのは刑の種類や重さによって場所が決まっているので、その場所からも父のした犯罪内容もおおよそ察することができた上に、その不思議な「黒い穴」も、つまりは父は自分を思って毎年年賀状を出していたのではなく、施設側からのある種の指示というか、父親本人の意思でなかったことが彼は知ったわけです。父は壁の中にいると。
かつ、父のことを知る流れの中で、彼は父が部落の出身であることを知ります。僕自身もそうなのですが、関東にいると部落というものは知識として知っていても、全くもって一般には身近なものではなく、僕自身も同じ人間として差別はいけないし、するつもりもないと考えています。彼も同様だったのですが、それを知ったときの衝撃と同時に激しく父と部落を差別するある種の強い自分の気持ちに気づき、大きな動揺があったと。そして、自分の血の半分に部落の血が流れてるんだと。彼の両親の結婚に際し、実は周囲は父が部落出身だったとうことを知っていてかなりの反対があった中で結婚していたらしいことも、その時知ります。「そんなヤツと結婚するから苦労するんだよ!」と声をあげた自分の中に、今まで差別なんかしないと考えていた部落に対する差別の暴言を吐く自分に、きっと彼自身も本当に驚愕したんでしょうね、、これはきっと、客観的にはわからない人の心というものがあるように思います。強いて言えば、僕も同じことが起こって自分の中にその血が流れていることを知ったときに平常心でいられるか、そうなってみないと人は皆わからないということです。
こういうことは、ちょっと話は違いますが「ゲイに理解がある」と言っていながら、実際に息子にゲイだとカミングアウトされたり、夫が両性愛者だとカミングアウトされたりすると、妻や母親に泣かれることがとても多いというケースにも似ているのかもしれません。
彼から見たらトシの離れたこんなオヤジに、なんでそんな話するの?と僕も聞いてみた。「わかりません、でもなんか話したくなったんです。こんな話、ホントにほとんど誰にも話したことないんですけど」と(笑)。きっと、無意識にも頑張って「大丈夫、平気平気」と思ったりして気追っていた部分があって、でも何かはけ口を求めていたのだと思います。夜、彼のフェイスブックを覗いてみたら、すごく純粋かつ真摯。基本的な部分は何も隠そうともカッコつけようともしてなくて、コメントなんかにも普通に「うん、家が貧乏だったから昼は働いて大学は2部に行ってたんだ~」なんてあったりして、いやあ、なんかすごくいいヤツ!って感じで、ゲイだったら食っちゃうかも!みたいな(笑)。
今日のトピックは、だから何というわけではない事実をレポートしただけです。でも、きっと皆さんそれぞれいろんなことを思うんじゃないかな。僕もその話を聞きながら、様々に想いを巡らしたから。昨日ちょっと打ち合わせが遅くなってしまって、食事もまだだったし彼を誘って近くの飲み屋での話。
by usatoru
| 2013-04-04 11:48
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Comments(8)
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TAKU
at 2013-04-04 21:44
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考えさせられます。
新しい部署に身障者の人がいるのですが、慣れないせいもあってちょっとギクシャクする。本人は全く気にしてないんですけど。
こっちが気になります。
新しい部署に身障者の人がいるのですが、慣れないせいもあってちょっとギクシャクする。本人は全く気にしてないんですけど。
こっちが気になります。
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mai
at 2013-04-04 22:02
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奇しくも先日一つ上の友達と話していた時に出てきた「部落」の話し。彼女はその存在すら知らなくて、ああこういう人もいるんだと思ったのですが、今日の記事を読んで考えさせられました。う〜ん....この差はなんだろう。
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at 2013-04-05 01:09
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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usatoru at 2013-04-07 10:39
TAKUさん。気を遣うことも優しさの一方で、相手の方はむしろ普通に接してくれる方が嬉しい、、、という難しいところがありますよね。ゲイも同じようなとこあるしなあ。
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usatoru at 2013-04-07 10:40
maiさん。関東では結構そういう人多いように思いますよ。意識があるかないかで、結構知っている人と知らない人に分かれてしまうのかもしれません。
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usatoru at 2013-04-07 10:43
鍵コメさん。いろいろと大変な過去があったんですね。過去の記憶と胸の痛みは消すことはできないけれど、これからの未来のご自身と息子さんの時間がシアワセなものであるよう祈るばかり。(DNAより、きっと母親の愛情と教育が、心配を半減させてくれるはず(笑)。
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Reirin
at 2013-04-07 20:12
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ちょっと飲み屋での話にしては、とっても重い話ですね~!(>_<)
人の意識を変えるのは、もどかしいほど難しいんですよね~。。
でも、その青年が文太さんに心の内を吐露できたのは、とってもいい
出会いに巡り合えたのだと嬉しく思います!
人の意識を変えるのは、もどかしいほど難しいんですよね~。。
でも、その青年が文太さんに心の内を吐露できたのは、とってもいい
出会いに巡り合えたのだと嬉しく思います!
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usatoru at 2013-04-13 17:28
Reirinさん。何もできないけれど、何がしかのプラスの方向にむかう役に立てたのであれば嬉しいのですけどね、、