ベオグラードのホテルにて。 |
1988年頃にこのホテルに泊まった記憶がある。当時共産圏の東欧は、外国人が泊まれるホテルは指定され、個人宅に泊まる場合は警察への届出が必要だった。記憶では1泊1万円弱、当時現地では1ヶ月の平均給与に相当。国として外貨獲得の手段として、外国人からしっかり取るという政策。
学生の貧乏旅行で泣く泣く毎晩1万円を払ったかというとそうでもなく。なぜなら当時は東欧各国とも国境での入国時に強制両替という仕組みがあり、約300-500ドルが相場。両替したカネは再両替はできないので滞在中に使い切るしかない。ただ困ったことに、どの国も平均月給が1-2万円程度という世界なので、500ドル相当の現金は到底使い切れない。バスや地下鉄は20円くらい、タクシーも超格安、飲食も200円もあれば満腹になり、どんなに頑張っても1日1,000円でもお釣りがくる。いわゆる「高級品」も西側の人間が欲しがる代物でなく触手も伸びない。バナナは超高級品だったけれど全く欲しくなかったし、国営デパートの棚高くに飾られたSONYのWalkmanも庶民には高嶺の花とはいえ数年前の古い型、そんな世界。
となると「ホテル代で使い切るしかない」という年度末の役所のような発想になり、学生ながら高級ホテル連泊に躊躇もなくなった。もっとも西側から来ると、高級ホテルと言えどもどこか古臭く薄暗い雰囲気で共産圏にいることを否が応でも感じたものだったけれど。
アメリカ資本で全てがモダンにリノベートされ、老舗ホテルの格式を継承しつつ生まれ変わったこのホテルで、遠い30年前に想いを馳せる夜。あの時歩いた国、ユーゴスラビアは今はない。時代を観てきたなあ、と改めて思う。そして、30年を経て泊まる部屋もスイートルーム(笑)。もっとも、それほど高いわけではないんですけどね。
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