2007年 04月 05日
サクラ |
”願はくは 花のもとにて 春死なむ その如月の 望月のころ”
この西行法師の句を思い出すのが僕の毎年この時期のお約束というか習慣というか。今日も会社帰りに、例年一足遅れて満開になる家の近所の桜を眺めながら、この句を反芻してました。おそらく、この国に桜がなかったら生命の息吹溢れるこの季節は、欧米でいえばちょうど今ごろのEASTERのように春の訪れを純粋に祝う「楽しい時間、嬉しい季節」というものになっていたでしょう。もっとも桜に意識がシフトしたのは江戸時代以降で、それ以前はもっぱら梅が主役?だったらしいですけどね。
よく言われることですが、桜の儚さと散り際に見せる美しさに、おそらく古来より日本人は浮かれがちなこの季節の中に一抹の淋しさのようなものを感じ取り、独特の春の日本的情感を育んできたのだと思います。桜は・・・・多分、この日本の適度に湿度を持ったこの春の陽気と、そして我々日本人あってこそ感じる情緒なのかもしれません。
東京市が贈呈した有名なワシントンの桜、あれは確かに見事ですけど、むこうで見ると日本人としては遠く日本に想いを馳せることはあっても、不思議と日本で感じる独特の情感みたいなものがないことに驚いたことがあります。考えるに、原因はきっと、、、気候的なものは勿論、何か目につく星条旗にも原因があるかと思うものの、何よりも桜を見る(愛でる)日本人特有の「眼」が、そこを歩くアメリカ人達にはなかったことのように思います。変な意味じゃなくて、アメリカ人に限らず、外国人にとってチューリップ畑を歩くのも、桜並木を歩くのもある種同じ感覚なのではないかな、と。
桜はいいですね。
そして、その後のこの瑞々しい新緑。満開の桜の下を歩きながら、例年この時期は海外にいることが多かった僕は、今まで何回この本来見るべき季節を失ったのだろう、、、なんて思ったり。去年はちょうどアメリカだったかな。
今日も大回りをしてこの桜並木を歩きつつ、枝の間、雲の切れ間から見え隠れする煌々と輝く青白い月を眺め。並木を抜けた公園には、これまた木霊が宿っているようなしだれ桜。うーん、梶井基次郎だったか桜の木の下には死体が埋まっているとかいう詩・・・・・このどこか神秘的で怪しい月光の中で、何か怖いようなこの桜の美しさを見ると、あながち、そんなこともありえるような・・・そんな気もしてしまう今宵の桜。
by usatoru
| 2007-04-05 20:16
| 日常生活
|
Comments(23)
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mimi
at 2007-04-05 20:57
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桜の季節に日本にいない歴18年です。
こちらにもさくらんぼの木があるので"桜の木”はあるのですが、やはり桜とは違います。桜を愛でるとき、「私は日本人だなぁ」と思います。桜の季節、桜の風景というのはやはり日本では区切りだと思います。今は、咲き誇ったマグノリア(木蓮)を見るとなぜか、桜を見たときのような甘酸っぱい気持ちが溢れます。
こちらで夜桜を見るように暗くなってからマグノリアを見ていたら、立派な不審者です。淋しい。。。
こちらにもさくらんぼの木があるので"桜の木”はあるのですが、やはり桜とは違います。桜を愛でるとき、「私は日本人だなぁ」と思います。桜の季節、桜の風景というのはやはり日本では区切りだと思います。今は、咲き誇ったマグノリア(木蓮)を見るとなぜか、桜を見たときのような甘酸っぱい気持ちが溢れます。
こちらで夜桜を見るように暗くなってからマグノリアを見ていたら、立派な不審者です。淋しい。。。
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misaki
at 2007-04-05 22:53
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文太せんせ、こんばんは。
私も去年はこっちにいなくて友達に送ってもらった写メでお花見しました。やっぱ日本の桜は情緒が違~う!というわけで今年は2年分お花見してます。
ところで先生、西行法師さんのこの詩はどういう意味ですか?教えてください。綺麗な響きの詩ですね。聞いたことあるかも。
私も去年はこっちにいなくて友達に送ってもらった写メでお花見しました。やっぱ日本の桜は情緒が違~う!というわけで今年は2年分お花見してます。
ところで先生、西行法師さんのこの詩はどういう意味ですか?教えてください。綺麗な響きの詩ですね。聞いたことあるかも。
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NOMI
at 2007-04-05 23:10
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私もこのうた、大好きでよく思い出すし これ理想ww でも、私と1まわり違うお友達、このうた知らなかったの、もぅ習わないのかなぁ??
今日安部内閣のメルマガにもワシントンの桜のこととか書いてありましたょ~!!超タイムリー!!(ほよっw?) 地元の県花の梅も大好きなんですケド やっぱ桜は深い深い思いがあるんですよねー。あーなんかBUNTAさんの読んでたら 子規あたりも読み返したくなりました!!!!
しかし、BUNTAさんはほんと博学ですねー@@、私は1つ覚えると3は抜けていく今日この頃です(号泣)
今日安部内閣のメルマガにもワシントンの桜のこととか書いてありましたょ~!!超タイムリー!!(ほよっw?) 地元の県花の梅も大好きなんですケド やっぱ桜は深い深い思いがあるんですよねー。あーなんかBUNTAさんの読んでたら 子規あたりも読み返したくなりました!!!!
しかし、BUNTAさんはほんと博学ですねー@@、私は1つ覚えると3は抜けていく今日この頃です(号泣)
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at 2007-04-05 23:32
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
会社の同僚のお兄さんが(アリタリアのホステス)日本へ行ったときに買って来てくれた「シューカンブンシュー」に「そうだ、京都行こう」の広告がありました。今朝まさにその鴨川及び河川敷の桜の写真を相方に見せたんですね。確かに私、日本に渇いています。
今日の文太さんのお話で、ずっと見ていない桜の風景がよみがえりました。ちょっとホームシック・・・。
今日の文太さんのお話で、ずっと見ていない桜の風景がよみがえりました。ちょっとホームシック・・・。
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lotusmama at 2007-04-06 05:31
日本の桜はいいですよね〜。 4年前のちょうど今頃、フレッドを連れて日本列島の旅をした際につくずく日本の桜(春)の美しさに改めて感動しました。 京都の円山公園で酔っぱらってお花見しているたくさんの人々を見てびっくりしていた彼ですが、街角で見かける様々な西洋人のフォークシンガーやギターリストにもっと驚いていました。 こちらの桜はなぜか情緒にかけますね。
でも文太さんのブログってお勉強に成ります^^
でも文太さんのブログってお勉強に成ります^^
あれぇ、俺もその歌知りませんでした。 俺もじゃぁ、ぶんたさんと一回り違うのかなぁ???
俺もこの時期に日本にいない歴ながーいです。
日本の桜ほんときれいですよねぇ・・・
んー、桜の花の塩漬けがたくさん作れるし・・・
ぶんたさん、代わりに作っといてくださいよ!
俺もこの時期に日本にいない歴ながーいです。
日本の桜ほんときれいですよねぇ・・・
んー、桜の花の塩漬けがたくさん作れるし・・・
ぶんたさん、代わりに作っといてくださいよ!
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bebecat at 2007-04-06 10:16
桜は日本で観てこそ桜、ですよね。ひとそれぞれに、ものそれぞれに決められた居場所っというものがあるんだと思います。どこででも手に入るようなものでも、正しい居場所で手にしたときの感動とそのものへの価値の評価は比べ物になりません。
ちなみにその歌初めて聞きましたよ。知識薄ですね。ははは。桜の花の塩漬けもしりませんでした。おいしいの?
桜、もう20年以上見てないかな。
ちなみにその歌初めて聞きましたよ。知識薄ですね。ははは。桜の花の塩漬けもしりませんでした。おいしいの?
桜、もう20年以上見てないかな。
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Neige
at 2007-04-06 15:33
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文太さんの桜のブログ、海外の日本人のお里心をくすぐったみたいですね。私もくすぐられた一人です~。私にとって日本の桜と言えば学校の帰りに友達と寄り道して上野公園の桜を見てはしゃいでいた若かりし頃の自分を象徴していて。(今となってはかなしや葉桜な私) なんだか余計に桜の花のはかない美しさが心に沁みます。あまりに懐かしくって2年前お庭にソメイヨシノを植えました。まだまだヒョロヒョロですが去年はすこ~しだけ花を付けました。今年はどうかな?
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usatoru at 2007-04-06 18:39
mimiさん。桜は・・・思うに、仮に外国にある株が日本の桜と同じ品種であったとしても、日本の風土で、日本人の眼で、日本人の心でそれを見たときに初めて「これは桜だ」と感じられるのかもしれないですよね。それにしても夜桜ならぬ、夜マグノリアが不審者扱いでは確かに淋しい(^^;
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usatoru at 2007-04-06 18:40
misakiさん。2年分の花見は楽しめましたかー?こういう詩とか句を、意味がわからなくても、音できれいだなあ、、、と思う気持ちから意味を知りたい・・・、そういう気持ちすごく素敵だと思います。意味は人によっていろいろあると思いますけど、こんな感じです。
「望みが叶うのであれば、こんな花も盛りの2月の満月の季節に命を終えたいものだなあ・・・・」
西行は平安時代の人なので、この如月(2月)といっても旧暦です。時期的には今頃になるようです。そして西行はお坊さんでもあるので、「お釈迦様と同じ、このような春も盛りのこの季節に私も逝きたいものだなあ」なんて解釈もあるとか、高校のとき古典の先生は言ってました。ちなみに、平安時代なのでこれは桜じゃなくて梅だという節もあるとか。・・・真実は西行のみが知る、です(笑)。いずれにしても昔の桜は野桜だったので、今のような絢爛さはなかったようです。
「望みが叶うのであれば、こんな花も盛りの2月の満月の季節に命を終えたいものだなあ・・・・」
西行は平安時代の人なので、この如月(2月)といっても旧暦です。時期的には今頃になるようです。そして西行はお坊さんでもあるので、「お釈迦様と同じ、このような春も盛りのこの季節に私も逝きたいものだなあ」なんて解釈もあるとか、高校のとき古典の先生は言ってました。ちなみに、平安時代なのでこれは桜じゃなくて梅だという節もあるとか。・・・真実は西行のみが知る、です(笑)。いずれにしても昔の桜は野桜だったので、今のような絢爛さはなかったようです。
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usatoru at 2007-04-06 18:40
NOMIさん。僕も学生時代の恩師がかなり前ですけど、この時期に亡くなって。お寺の桜も満開で、そこで遺影を眺めながら、僕もこんな季節に・・・・って思いました。
すごくうららかな暖かい日和で。梅ともよく対比されるけど、梅はまだちょっと寒い季節で、なんか心伸びやかに花見をする・・・という感じがあり、季節的にも心理的にもまだ冬を引きずっているようなところが、最終的に華やかで暖かい季節の桜にとってかわられたのかも・・・・と、これは僕の勝手な推論ですが。
すごくうららかな暖かい日和で。梅ともよく対比されるけど、梅はまだちょっと寒い季節で、なんか心伸びやかに花見をする・・・という感じがあり、季節的にも心理的にもまだ冬を引きずっているようなところが、最終的に華やかで暖かい季節の桜にとってかわられたのかも・・・・と、これは僕の勝手な推論ですが。
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usatoru at 2007-04-06 18:41
はじめましてさん。はじめまして!
そうですか。花見が「梅」から「桜」になったのは既に平安時代からなのですね!僕は何かでたまたま「花見が桜になったのは結構最近のこと」みたいなことを聞いたのをそのまま鵜呑みにしてました。品種改良されたソメイヨシノが出て、華やかな桜になったの幕末っていうのと勘違いしたかもしれません(^^;
で、僕も梅、好きですよ。実家の庭に紅梅の巨木があって・・・白梅よりちょっと季節は遅いのですが、それが咲くと春だなあ、、、って子供心に感じたものです。
そうですか。花見が「梅」から「桜」になったのは既に平安時代からなのですね!僕は何かでたまたま「花見が桜になったのは結構最近のこと」みたいなことを聞いたのをそのまま鵜呑みにしてました。品種改良されたソメイヨシノが出て、華やかな桜になったの幕末っていうのと勘違いしたかもしれません(^^;
で、僕も梅、好きですよ。実家の庭に紅梅の巨木があって・・・白梅よりちょっと季節は遅いのですが、それが咲くと春だなあ、、、って子供心に感じたものです。
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usatoru at 2007-04-06 18:45
macoromさん。おっとホームシックですかー。しかも桜の季節の京都なんていったら、それは確かにある意味毒ですよねえ。。。「そうだ、京都に行こう!」って気軽に言われちゃうところがまた残酷な話でもあり・・・・
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usatoru at 2007-04-06 19:20
Lotusmamaさん。この季節に旅行をする外国人は、やはり一様に全国津々浦々での桜の風景に心打たれるっていいます。やはり日本でみるからこそのそういう気持ちになるんでしょうねえ。日本で見る桜は外国人をも日本人にする?んだなあ、なんて思う僕です(笑)
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usatoru at 2007-04-06 19:24
HEROさん。意外に知らない方が多いんだなあ、、、でも少なくとも西行広報部長の僕が今回少しは宣伝できたかな?桜の塩漬けは、香りもよおくて季節を感じさせていいけれど、あれって花を摘まなくちゃいけないじゃないですか。虫も殺せない僕に花盗人はできません~(?)
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usatoru at 2007-04-06 19:26
bebecatさん。桜を見ずの20年ですかー。いつか是非桜の季節に帰国してくださいねー。結構ね、この時期の成田も上空から見ると春霞の中に桜が見えてきれいなんですよ。空港の端にも桜が植えてあるし。いつにも増して「帰ってきたなー」って感じがしますよ!
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usatoru at 2007-04-06 19:29
Neigeさん。はい、くすぐり好きな僕です。悪趣味ですよねえ(笑)。よく栗助にやってます。
それにしても庭にソメイヨシノ、いいですねえ!早く大きくなって近所でもちょっとした春の楽しみになるような、そんな桜に育ってほしいです。そしたら僕も花見にいきますよ!
それにしても庭にソメイヨシノ、いいですねえ!早く大きくなって近所でもちょっとした春の楽しみになるような、そんな桜に育ってほしいです。そしたら僕も花見にいきますよ!
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mondoarmonia at 2007-04-06 21:49
でも、そこで花を摘むことによって、その花の寿命がずーっとのびるってのいいと思いません? 短い一生も形を変えて長い生涯になるってのよくないですかねぇ? 食べるときにまた、そのころの気持ちを思い出したりなんかして・・・
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tammys04 at 2007-04-07 05:18
遅ればせながらコメント。
私も二十歳ですが(笑、もうええって)、この歌知ってます。高校で習いました。
桜に対する感覚、この情緒は日本人特有のものじゃないでしょうか。
儚さとかねイタリア語でも感覚としてなんか違うと思ってしまいます。桜吹雪もランラン♪というよりは切なく見えるのは私だけ?京都も桜がかなり綺麗ですが、OLしてた頃春になると毎年お弁当を持って京都御所へ出かけていましたが桜の木を見上げてなんとなく寂しくなったのを覚えています。私もまだ日本人のアイデンティティーなくなってないらしいです・・・あの切なさなんか思い出しちゃった。
私も二十歳ですが(笑、もうええって)、この歌知ってます。高校で習いました。
桜に対する感覚、この情緒は日本人特有のものじゃないでしょうか。
儚さとかねイタリア語でも感覚としてなんか違うと思ってしまいます。桜吹雪もランラン♪というよりは切なく見えるのは私だけ?京都も桜がかなり綺麗ですが、OLしてた頃春になると毎年お弁当を持って京都御所へ出かけていましたが桜の木を見上げてなんとなく寂しくなったのを覚えています。私もまだ日本人のアイデンティティーなくなってないらしいです・・・あの切なさなんか思い出しちゃった。
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Hero
at 2007-04-07 07:42
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あぁ、じゃ、TammysとBuntaさん同年代ですね。 僕はもちろん若いから、その歌学校で習ってませーん! ^v^)/
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usatoru at 2007-04-07 21:13
mondoarmoniaさん。そういう考え方もあります・・・が。結構桜の花を摘んでいると冷たい目で見られそうな気がします~。自分の家の庭ならいいですけど(笑)
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usatoru at 2007-04-07 21:15
tammys04さん。せつなさ、儚さに美を感じる、、まさに日本人ですよー。でも京都の春はきれいでしょうねー。京都は何度も行ってはいるのもの桜の季節に行ったことはまだ一度もありません。ちょっとした憧れかも。それこそ奈良に言けば吉野もあるし、、、いつしか行ってみたいもんです(^^